保育園や学童のお迎えに間に合わせるには、定時で帰れることが欠かせません。育児・介護休業法には、一定の子を養育する労働者が残業や深夜勤務を制限できる制度があります。ただし、一般に「残業免除」と呼ばれる制度と、残業時間に上限を設ける制度は別物です。
2025年4月1日から、所定外労働の制限(残業免除)の対象は小学校就学前の子を養育する労働者まで広がりました。この記事では、2026年10月26日時点の厚生労働省の情報をもとに、3制度の違い、対象者、申出期限と会社に確認する内容を整理します。
先に結論:定時で帰りたいなら「所定外労働の制限」を確認
- 会社の所定労働時間を超える残業をなくしたい:所定外労働の制限(残業免除)
- 法定時間外労働を一定の範囲に抑えたい:時間外労働の制限(月24時間・年150時間まで)
- 午後10時から午前5時まで働かないようにしたい:深夜業の制限
3制度はいずれも、原則として小学校就学前の子を養育する労働者が対象です。「残業免除を申し出たつもりだったのに、時間外労働の上限だけが適用された」という行き違いを防ぐため、制度名と希望する働き方をセットで伝えます。
育児中に使える3つの勤務制限
| 制度 | 制限される勤務 | 1回の請求期間 | 申出期限 |
|---|---|---|---|
| 所定外労働の制限(残業免除) | 会社が定めた所定労働時間を超える労働 | 1か月以上1年以内 | 開始予定日の1か月前まで |
| 時間外労働の制限 | 法定時間外労働を月24時間・年150時間以内に制限 | 1か月以上1年以内 | 開始予定日の1か月前まで |
| 深夜業の制限 | 午後10時から午前5時までの労働 | 1か月以上6か月以内 | 開始予定日の1か月前まで |
請求回数に法律上の上限はありません。期間が終わった後も必要なら、次の期間について改めて申し出ます。申出中に子が就学するなど、法律上の対象条件を外れた場合は制度が終了することがあります。
「所定外」と「時間外」は基準が違う
所定外労働は、会社が雇用契約や就業規則で定めた勤務時間を超える労働です。たとえば所定労働時間が1日7時間の場合、7時間を超えた部分が所定外労働です。一方、時間外労働の制限でいう時間外労働は、原則として法定労働時間を超える労働を指します。
そのため、毎日のお迎えに間に合わせる目的なら、月24時間まで残業できる時間外労働の制限より、所定時間を超える勤務を免除する「所定外労働の制限」が希望に近い可能性があります。
どの制度を申し出る?3分で確認する判断フロー
- 毎日ほぼ定時で帰る必要がある → 所定外労働の制限を確認
- 一定の残業はできるが、長時間残業は難しい → 時間外労働の制限を確認
- 夜勤・遅番で午後10時以降になる → 深夜業の制限を確認
- 始業・終業時刻そのものを変えたい → 時差出勤やフレックスタイムなど会社の措置を確認
- 1日の勤務時間を短くしたい → 育児短時間勤務制度を確認
制度は目的が異なるため、必要に応じて複数を検討します。勤務時間を短くする場合は、給与の変化も含めて育児時短就業給付金の条件を先に確認してください。在宅勤務と短時間勤務の選び方は、時短勤務と在宅勤務の比較で整理しています。
対象になる人・対象外になり得る人
3制度の基本的な対象は、小学校就学前の子を養育する男女労働者です。正社員だけの制度ではありません。パート・契約社員なども条件を満たせば対象です。配偶者が働いているか、育児休業中かどうかだけで一律に対象外にはなりません。
| 確認項目 | 所定外・時間外 | 深夜業 |
|---|---|---|
| 子の年齢 | 小学校就学前 | 小学校就学前 |
| 日々雇用される労働者 | 対象外 | 対象外 |
| 継続雇用1年未満 | 労使協定があれば対象外になり得る | 対象外になり得る |
| 週の所定労働日数が2日以下 | 労使協定があれば対象外になり得る | 対象外になり得る |
| 同居家族が保育できる | それだけでは対象外にならない | 一定条件を満たす家族がいる場合は対象外になり得る |
| 所定労働時間の全部が深夜 | ― | 深夜業制限の対象外 |
深夜業の制限には、同居する16歳以上の家族が深夜に就業しておらず、心身の状況から保育ができ、出産予定日まで6週間以内または産後8週間以内でもないことなど、固有の条件があります。家族が同居しているというだけで判断せず、会社の育児・介護休業規程と厚生労働省の案内で確認してください。
会社は必ず残業を��除する?
所定外労働の制限について、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社が請求を拒める規定があります。ただし、単に「この部署は残業がある」「人手不足だから」という説明だけで一律に拒否できるという意味ではありません。会社は、請求した人の担当業務や代替要員の配置などを踏まえて客観的に判断し、請求に沿えるよう配慮することが求められます。
申出や制度利用を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています。説明に納得できない場合は、拒否理由を記録したうえで、人事・労務担当や都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談します。
申出前に確認する7項目
- 子の生年月日と小学校就学前か
- 希望する制度名と、避けたい勤務時間
- 開始予定日と終了予定日
- 開始予定日の1か月前に間に合うか
- 会社所定の申出書・提出先・提出方法
- 労使協定による対象外条件に当てはまらないか
- 給与、手当、シフト、評価に関する取扱い
口頭だけで終わらせず、提出日・申出期間・受理した担当者を残します。シフト制なら、すでに確定したシフトをどう扱うか、翌月以降のシフトへいつ反映されるかも確認します。
会社への申出メール例
件名:育児のための所定外労働制限の申出について
育児・介護休業法に基づく所定外労働の制限を、○年○月○日から○年○月○日まで申し出たいと考えています。対象となる子の生年月日は○年○月○日です。会社所定の申出書、提出先、必要書類をご案内ください。保育施設のお迎え時刻は○時のため、期間中は所定終業時刻○時で退勤できる勤務を希望します。業務の引継ぎ方法については、上司と相談して整理します。
制度名だけでなく、お迎え時刻と希望する退勤時刻を明記すると、働き方の認識を合わせやすくなります。時間外労働や深夜業の制限を希望する場合は、制度名と希望期間を置き換えてください。
2025年10月からの「柔軟な働き方を実現するための措置」との違い
2025年10月1日から、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、会社は柔軟な働き方を実現するための措置を2つ以上用意し、対象者はその中から1つを選べる仕組みが始まりました。会社が選ぶ候補は、始業時刻等の変更、月10日以上のテレワーク等、保育施設の設置運営等、年10日以上の養育両立支援休暇、短時間勤務です。
これは残業免除とは別の制度です。会社が用意した選択肢と、自分が必要とするお迎え対応が合うかを確認します。定時退勤だけでなく、勤務開始を早める、在宅勤務日を設ける、短時間勤務にするなど、複数の方法を比較してください。
転職時に確認する「残業」の比較シート
| 確認項目 | 求人票 | 面接での確認 | 労働条件通知書 |
|---|---|---|---|
| 所定始業・終業時刻 | |||
| 月平均残業時間 | 繁忙月・部署別も確認 | ||
| 固定残業代 | 時間数と金額 | 超過分・実績を確認 | 記載を確認 |
| 残業免除の利用者 | 同じ部署の運用例を確認 | ||
| 時差出勤・在宅・時短 | 対象・頻度・申請時期 | ||
| 急な看護時の対応 | 連絡方法・引継ぎ |
「残業少なめ」という表現だけでは、お迎えに間に合うか判断できません。残業時間の数字と、制度を実際に使える運用の両方を確認します。求人票から入社後までの順番は、子育てしやすい会社の12項目チェックを使うと整理できます。転職条件を絞る前に、母親の仕事探しの優先順位も書き出しておきましょう。
制度確認から仕事探しへ進む順番
- 今の会社で3制度と柔軟な働き方の措置を確認する
- 希望する退勤時刻・勤務日・収入下限を数値にする
- 現在の職場で実現できない条件だけを転職条件にする
- 求人票、公的職場情報、面接、労働条件通知書の順に確認する
- 入社前に「制度がある」だけでなく利用条件と部署での運用を確認する
公的な相談から始めたい場合は、マザーズハローワークの使い方を確認してください。民間サービスを含めて探し方を比較するなら、母親向け転職サービスの選び方があります。時短正社員を重覒する人はリアルミーキャリア、リモート勤務を重覒する人はRemoful、業務委託や在宅求人も含めて探す人はママワークスの条件を比較できます。
退職を先に決めるのではなく、現在の制度、家計、転職条件の順に整理することが大切です。全体の進め方は母親の再就職ロードマップで確認してください。子どもの急病時に使える休暇は、子の看護等休暇の対象・日数・申出方法にまとめています。
公式情報
- 厚生労働省:所定外労働の制限(残業免除)
- 厚生労働省:時間外労働の制限
- 厚生労働省:深夜業の制限
- 厚生労働省:育児・介護休業法の改正について
- 厚生労働省:令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A
- 厚生労働省:育児・介護休業法について
- 厚生労働省 共育プロジェクト:育児に関する制度
制度の対象や手続きは、法改正や会社独自の上乗せ制度によって変わることがあります。申出前には、厚生労働省の最新情報、会社の就業規則・育児介護休業規程、人事・労務担当の案内を確認してください。


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