「娘がいない」
その現実を突きつけられた時、頭が真っ白になり、心臓が氷水に浸されたように冷たくなって、何をどうすればいいのか、全く分からなくなってしまいますよね。
私もそうでした。ただただ涙が溢れ、震えることしかできなかったあの夜。もし、あの時の自分に今の私が声をかけられるなら、「大丈夫。まずは深呼吸して。やるべきことは、ちゃんとあるから」と伝えたいです。
この記事では、子どもの家出という緊急事態に直面した親が、まず最初に何をすべきかを具体的なリストにまとめました。
パニックの中でこの記事にたどり着いたあなたの心が、少しでも落ち着きを取り戻し、「今、自分にできること」が明確になることを願っています。
大前提:自分を責めないでください
本題に入る前に、一つだけ、心に留めておいてほしいことがあります。
それは、「自分を責めないで」ということです。
「私の育て方が悪かったの?」
「あの時、もっと話を聞いてあげていれば…」
次から次へと後悔の念が押し寄せてくるお気持ちは、痛いほど分かります。でも、今は自分を責めている場合ではありません。一番大切なのは、お子さんの無事を信じて、親である私たちが冷静に行動することです。
自分を責めるのは、お子さんが無事に帰ってきてから、いくらでもできます。今は、前に進むことだけを考えましょう。
【緊急度順】初動で親がやるべきことリスト
頭が混乱している時は、多くの情報を一度に処理できません。ここでは、本当に「まずやるべきこと」だけを、順を追って解説します。一つずつ、チェックリストのように確認してみてください。
□ STEP 1:子どもの情報を正確にまとめる
警察や学校に連絡する前に、まずはお子さんの情報を正確にまとめることが、迅速な捜索の第一歩になります。焦っていると、いざという時に「あれ、何を着てたっけ…」と思い出せないものです。
【まとめるべき情報リスト】
- 基本情報:
- 氏名、年齢、生年月日
- 身長、体重、血液型
- 身体的な特徴(髪型、ほくろの位置、メガネの有無など)
- いなくなった時の状況:
- 最後に会った(見た)日時と場所
- その時の服装(上着、ズボン、靴の種類や色まで詳しく)
- 持っている可能性のある物(カバン、スマホ、財布、現金、ICカードなど)
- デジタル情報:
- 普段使っているSNSアカウント(X, Instagram, TikTokなど。ニックネームも)
- オンラインゲームのアカウント名
- メールアドレス
- 写真:
- 最近撮影した、顔がはっきりと分かる写真(スマホに入っているもので大丈夫です)
□ STEP 2:子どもの部屋をそのままにしておく
「探しやすくしなきゃ」と、焦って部屋を片付けてしまうのは待ってください。
部屋の状態や、何が持ち出され、何が残されているかは、計画的な家出なのか、それとも事件性があるのかを判断する非常に重要な手がかりになります。警察が状況を確認する際にも役立ちますので、できるだけそのままの状態を保全するようにしましょう。
□ STEP 3:警察へ連絡し、「行方不明者届」を提出する
ためらう必要は一切ありません。お子さんがいないと分かった時点で、速やかに警察に連絡しましょう。ただし、連絡方法には適切な使い分けがあります。
【警察への連絡方法】
- 警察相談専用ダイヤル「#9110」
- 「事件か事故か分からない」「家出のようだが、どうしたらいいか」という場合、まずはこちらに電話してください。状況を説明すると、専門の担当者がその後の手続き(どこの警察署に行くべきかなど)を指示してくれます。
- 緊急通報「110番」
- 誘拐をほのめかす電話があった、部屋に争った跡があるなど、明確な事件性があり、緊急で警察官に来てほしい場合はこちらにかけます。
電話で指示を仰いだ後、速やかに最寄りの警察署へ行き、「行方不明者届」を提出します。交番でも話はできますが、最終的な受理や登録はお子さんの住所地を管轄する警察署の生活安全課などが行うため、直接警察署へ向かう方がスムーズです。
<私の経験からお伝えしたいこと>
私も最初は「捜索願」という言葉しか知りませんでした。正式な手続きの名前を知っているだけでも、少しだけ落ち着いて話を進めることができます。また、警察署の生活安全課の方は、同じような相談を数多く受けている専門家です。一人で抱え込まず、プロに相談するという気持ちでドアを叩いてください。
□ STEP 4:警察の対応の「現実」を知っておく
「行方不明者届」を提出すれば、すぐに大規模な捜索が始まる、と期待してしまうかもしれません。しかし、現実にはそうならないケースが多いことを、私たちは知っておく必要があります。
警察は届出を受理すると、状況に応じてお子さんを「特異行方不明者」と「一般家出人(旧:一般家出人)」に分類します。
- 特異行方不明者とは?
- 警察が積極的に捜査を行うケースです。
- 犯罪に巻き込まれた可能性が高い、遺書などがあり自殺のおそれがある、年齢が低い(おおむね13歳未満)、病気などで生命の危険があると判断された場合に適用されます。
- 一般家出人とは?
- 上記に当てはまらない、自らの意思による家出と判断されたケースです。
- この場合、警察の対応は全国のデータベースへの登録が主となり、パトロールなどで偶然発見された際に連絡が入る、という受動的な対応が基本です。本人が帰りたくないと言えば、警察が強制的に連れ戻すことはできません。
この現実を知っておくことで、警察に任せきりにするのではなく、「親として、他にできることを探さなければ」と、次の行動へ主体的に移ることができます。
□ STEP 5:学校と、特に親しい友人に連絡する
警察への手続きと並行して、お子さんの交友関係をたどることも重要です。
- 学校(担任の先生)に連絡:
- 無断欠席になっていないか確認し、事情を説明します。
- 特に親しい友人(またはその保護者)に連絡:
- 子どもは親には言えないことを、友達には相談している可能性があります。「何か聞いていないか」「最近、悩んでいる様子はなかったか」を、できるだけ冷静に聞いてみましょう。
注意!SNSでの情報拡散は必ず警察に相談を
「早く見つけたい」という一心で、お子さんの写真や情報をSNSで拡散したくなる気持ちは、よく分かります。しかし、それには非常に大きなリスクが伴います。
- SNS利用の危険性
- デマや誹謗中傷の的になる
- 悪意のある第三者が「保護する」と偽って接触を試みる
- 本人が「晒された」と感じ、追い詰められてさらに遠くへ逃げてしまう
もし情報公開を考える場合は、必ず事前に警察に相談してください。公開する情報の範囲や、連絡先を警察署の窓口にするなど、専門家の指導を仰ぐことが、お子さんをさらなる危険から守ることに繋がります。
まとめ:発見はゴールではなく、再出発点です
お子さんがいない不安の中で、たった一人でじっとしているのは、本当につらいことです。だからこそ、今は冷静に行動しましょう。
- 子どもの情報を書き出す
- 部屋を保全する
- 「#9110」に電話し、警察署で「行方不明者届」を出す
- 警察の対応の現実を理解する
- 学校や友人に連絡する
そして、覚えておいてください。お子さんが無事に見つかることは、ゴールではありません。なぜ家を出なければならなかったのか、その根本的な原因と向き合う、本当の再出発点です。
再発を防ぐためには、家族だけで抱え込まず、スクールカウンセラーや児童相談所、民間のカウンセリング機関など、第三者の専門家の力を借りることも、とても大切なことです。
まずは、あなたとお子さんの安全が第一です。
一つずつ、できることから始めていきましょう。
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