警察への行方不明者届。期待と、知らされた「事件性がないと動けない」という厳しい現実

警察への行方不明者届。期待と、知らされた「事件性がないと動けない」という厳しい現実 家出~発見までの記録

子どものための情報をまとめ、震える手で警察に電話をかけたあの日。
「警察署へ来てください」
その言葉を聞いた時、暗闇の中に一筋の光が差したように感じたのを覚えています。

「警察に行けば、きっと何とかなる」
「プロに任せれば、すぐに見つけてくれるはず」

そんな藁にもすがるような思いで、夫と二人、最寄りの警察署へ向かいました。

この記事では、私たちが警察署で「行方不明者届」を提出した時のこと、そして、そこで知らされた厳しい現実について、ありのままにお話しします。

もしあなたが今、警察への届出を前にして、かつての私と同じように大きな期待を抱いているのなら、この記事を読んで心の準備をしておくことが、きっとあなたの助けになるはずです。

警察署の、重たい空気と事務的な手続き

警察署の中に足を踏み入れた時の、あの独特の緊張感を今でも思い出します。ドラマでしか見たことのなかった場所。自分がまさか、こんな形で来ることになるなんて、夢にも思っていませんでした。

生活安全課に通され、私たちは担当の警察官の方と向き合いました。
前回の記事でご紹介した通り、私たちは事前にまとめた娘の情報を紙に書き出して持っていきました。

  • 娘の名前、年齢、身体的な特徴…
  • 最後に見た時の服装、持っているであろうカバンやスマホ…
  • 最近の様子、友人関係…

警察官の方は、私たちの話を静かに聞き、時折質問を挟みながら、手元の書類に淡々と情報を書き込んでいきます。その冷静で事務的な様子に、「ああ、この人にとっては数ある案件の一つなんだな」と感じてしまい、焦りと不安でいっぱいの自分の心との温度差に、胸が締め付けられるような思いがしました。

全ての情報を伝え終え、「行方不明者届」の書類にサインをした時、私は思わず警察官の方に食い下がってしまいました。

「これで、探してもらえるんですよね?すぐに動いてくれるんですよね?」

その問いに対する答えが、私の最後の希望を打ち砕くものでした。

「事件性がないと、積極的には動けません」

警察官の方は、少し言いづらそうに、しかしはっきりとこう言いました。

「お気持ちはよく分かります。ですが、お嬢さんの場合、ご自身の意思で家を出られた可能性が高い『一般家出人』に分類されます。この場合、我々が積極的に捜査を行う『特異行方不明者』とは異なり、大規模な捜索を行うことは難しいんです」

頭をガツンと殴られたような衝撃でした。

「特異行方不明者」というのは、誘拐などの事件に巻き込まれた可能性が高い場合や、命の危険が差し迫っていると判断されるケースのこと。

そして、娘のように置き手紙があり、自らの意思で家を出たと見なされる場合は「一般家出人」となり、警察の対応は全国のデータベースに情報を登録し、パトロールなどで偶然発見された際に保護する、という受動的なものになるのだと。

「つまり…娘が自分で『帰りたくない』と言ったら、見つかっても連れて帰れないってことですか?」

「残念ながら、法律上はそうなります」

サーッと、血の気が引いていくのが分かりました。
「警察に行けば何とかなる」という、か細い希望の糸が、プツリと切れてしまった瞬間でした。

絶望の中で、見えたもの

警察署からの帰り道、車の中の重たい沈黙を破ったのは、夫のため息でした。
私の目からは、こらえていた涙がとめどなく溢れていました。

悔しくて、情けなくて、そして、どうしようもなく無力でした。
「なんで分かってくれないの」という社会への怒りと、「これからどうすればいいの」という途方もない絶望。

でも、不思議なことに、絶望のどん底で、私の頭は逆に冷静になっていきました。

警察が積極的に動いてくれないのなら。
このまま待っていても、誰も娘を探してはくれないのなら。

「あの子を守れるのは、私たち親しかいないんだ」

警察への期待が消え去った時、私の中に、母親としての新しい覚悟が生まれた瞬間だったのかもしれません。

まとめ:警察は万能ではない。でも、届出は無駄じゃない。

今回の経験を通して私が学んだ、最も重要なことです。

  • 警察は、すべての家出を大々的に捜査してくれるわけではない。
  • 「事件性」の有無が、その後の対応を大きく左右する。

この現実を知っておくことは、非常に重要です。過度な期待は、失望を大きくするだけだからです。

しかし、だからといって「行方不明者届」が無駄だというわけでは決してありません。届出を出すことで、お子さんの情報が全国の警察のデータベースに登録されます。これは、万が一の時に、お子さんの身元を証明し、安全を確保するための、命のセーフティーネットです。

警察に失望したとしても、この届出だけは、必ず、あなた自身のその手で済ませてください。

そして、私のように「親がやるしかない」と覚悟を決めた時、次の一歩は何をすべきなのか。
次の記事では、私たちが自力で娘を探そうとした、心身ともにすり減った日々の記録についてお話ししたいと思います。

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