「探偵に頼むなんて…」世間体と娘の未来の間で揺れ動いた私の葛藤

「探偵に頼むなんて…」世間体と娘の未来の間で揺れ動いた私の葛藤 家出~発見までの記録

雨に打たれ、アスファルトの上で声を上げて泣いたあの日。
「もう、私一人では無理だ」と、心と体のすべてが叫んでいました。

自力で探すという無謀な挑戦は、私から体力と気力を奪い、ただ深い無力感を突きつけただけでした。

その、どん底のような暗闇の中で、私の頭にぼんやりと、しかしはっきりと一つの言葉が浮かび上がってきました。

「探偵」

それは、私がずっと目を背けてきた、最後の選択肢でした。

この記事では、自力での捜索に限界を感じた私が、探偵への依頼を決意するまでに経験した、親としてのプライド、世間体への恐怖、そして娘の未来を天秤にかける、苦しい葛藤の全てをお話しします。

普通の家族には「無縁の世界」だと思っていた

「探偵」と聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか?
ドラマや映画の中の、少し怪しげで、特別な世界の住人…。

私もそうでした。
「うちみたいな、ごく普通の家族には全く無縁の世界だ」と。

だから、自力で捜索を始める前、ネットでその存在を知った時も、どこか他人事のように感じていたのです。「まさか、自分が頼ることになるなんて」と、心のどこかで強く否定していました。

探偵に依頼するということは、まるで自分たちの家族の問題を、自分たちの手で解決できなかったと認める「敗北宣言」のように思えてなりませんでした。

私の心を縛り付けた「世間体」という名の鎖

雨の中で泣き崩れ、自分の限界を悟った後も、私の心はすぐには決まりませんでした。むしろ、そこからが本当の葛藤の始まりでした。私の心を重く縛り付けていたのは、「世間体」という、見えない鎖でした。

夫に「探偵に、頼んでみない…?」と、おそるおそる切り出した時のことです。
夫はしばらく黙り込んだ後、疲れた顔でこう言いました。

「そんなことして、大事(おおごと)にならないか?近所や、俺の会社に知られたら…」

夫の言葉は、私の心の奥底にあった不安そのものでした。

  • もし、探偵が家の周りで聞き込みをしたら?
  • 「あそこのお宅、探偵を雇ったらしいわよ」なんて噂が立ったら?
  • 娘が帰ってきた時、「探偵にまで探された子」というレッテルを貼られてしまったら?

母親失格。
家族崩壊。

そんな言葉が頭の中をぐるぐると回り、ただただ恐怖で身がすくむ思いでした。娘を守りたいはずの行動が、逆に娘の未来を傷つけてしまうのではないか。その恐怖が、私から次の一歩を奪っていたのです。

天秤の片方には「娘の未来」

来る日も来る日も、夫と話し合うでもなく、重たい空気がリビングに漂っていました。
そんなある夜、眠れずにリビングで一人、娘が小さい頃のアルバムを開いていました。

無邪気に笑う、幼い娘。
私の手をぎゅっと握りしめている、小さな手。

その写真を見た瞬間、涙と一緒に、心の奥からマグマのような熱い感情が込み上げてきました。

「私は、一体何を守ろうとしているの?」

世間体? 親としてのプライド?
そんなもののために、今この瞬間も、どこかで一人でいるかもしれない娘を、危険に晒し続けているのか?

もし、万が一のことがあったら…?
もし、会えなくなってしまったら…?

その想像が頭をよぎった瞬間、天秤は、はっきりと傾きました。
世間体なんて、どうでもいい。私が守りたいのは、そんな曖昧なものではない。

この子の、未来だ。

あの子が、もう一度笑って「ただいま」と言ってくれる未来。
その未来を取り戻せる可能性があるなら、私はどんな泥だってかぶろう。母親失格だと、誰に指をさされたって構わない。

決意の夜

アルバムを閉じ、私は夫のいる寝室へ向かいました。
そして、はっきりとこう告げたのです。

「私、やっぱり探偵に相談する。あの子の未来には、代えられない」

私の覚悟が決まった目を見て、夫も静かに頷いてくれました。
長くて苦しい葛藤の夜が、ようやく明けた瞬間でした。

探偵に依頼するという決断は、決して簡単なものではありませんでした。それは、親としての無力さを認め、プライドを捨てる、痛みを伴う決断でした。

でも、世間体という名の鎧を脱ぎ捨て、母親として娘の未来だけを見つめた時、私はやっと、本当に前に進む覚悟ができたのです。

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