初めての探偵事務所への電話。私が聞いたこと、話したこと、そして「法律」という物差し

初めての探偵事務所への電話。私が聞いたこと、話したこと、そして「法律」という物差し 探偵の選び方・お金の話

パソコンの前で何日もかけて、無数の探偵事務所のサイトを見比べたあの日々。

最新の法律に基づいた6つのチェックポイントで怪しい業者をふるいにかけ、私の手元には、震えるような思いで選び抜いた3つの事務所の名前と電話番号が残っていました。

「ここに電話をすれば、何かが変わるかもしれない」
「でも、何をどう話せばいいんだろう…」

受話器を握りしめる手は、汗でじっとりと濡れていました。人生で、あれほど電話をかけるのが怖いと感じたことはありませんでした。

この記事では、そんな恐怖と一縷の望みが入り混じる中で、私が意を決して探偵事務所に電話をかけた時の、実際の会話の様子と、私が「この人なら、信じられる」と感じた、感情だけではない客観的なポイントについて、包み隠せずお話しします。

第一印象だけで判断する危険性

私が最初に電話をかけたのは、ウェブサイトの代表の方の言葉に、一番誠実さを感じた事務所でした。
「はい、〇〇探偵事務所、担当の鈴木です」
電話に出たのは、落ち着いた、静かなトーンの男性の声でした。

その穏やかな口調に、ガチガチだった私の心は少しだけ解きほぐされました。
しかし、その時、私は頭の片隅で、必死に自分に言い聞かせていました。

「人柄だけで判断してはダメだ。悪質な業者ほど、口調は優しい」

前の記事で学んだ知識が、感情に流されそうになる私を、必死に引き止めてくれていたのです。

私が「話したこと」:ありのままの状況

私はまず、これまでの経緯を、涙をこらえながら伝えました。

  • 娘がメモを残して家出したこと。
  • 警察には行方不明者届を出したが、「民事不介入の原則」があり、事件性がないと積極的な捜査は難しいと言われたこと。
  • 自力で1週間探したが、心身ともに限界であること。

ひとしきり私の話を聞き終えた後、鈴木さんは「大変でしたね」と静かに受け止めてくれました。そして、ここからが、私が「冷静な目で相手を判断する」ための、本当の戦いの始まりでした。

私が「聞いたこと」:自分を守るための質問リスト

私は手元に置いたメモを見ながら、事前に用意していた質問を、一つひとつぶつけていきました。これは、主観的な「相性」ではなく、客観的な事実を確認するための、あなた自身を守る武器になります。

  • 質問1:法的な資格について
    「まず最初に確認させてください。ウェブサイトで標識は拝見しましたが、公安委員会の届出番号を教えていただけますか?」
    → 鈴木さんは、よどみなく、サイトに記載されているものと同じ番号を答えてくれました。まず、第一関門クリアです。
  • 質問2:お金について
    「料金について具体的にお伺いします。時間料金やパック料金の詳細と、交通費などの追加経費が発生する条件を教えてください。また、それらは契約書に全て明記していただけますか?」
    → 彼は、各プランのメリット・デメリットと、経費については必ず事前に許可を取ること、そして全てを書面に明記することを約束してくれました。
  • 質問3:調査方法の合法性について
    「調査方法についてですが、住居侵入や違法な個人情報の取得など、法律に触れるような調査は一切行わない、と約束していただけますか?」
    → 「もちろんです。違法な手段で得た情報に価値はありません」と、きっぱりと答えてくれました。
  • 質問4:契約プロセスについて
    「契約前に、法律で定められている『重要事項説明書』をきちんと書面で交付し、説明していただけますか?」
    → この質問をした時、彼の声のトーンが、それまでで一番真剣になったのを覚えています。「はい、それは私たちの義務です。その書面をお持ち帰りいただき、ご家族でじっくり検討してからでなければ、絶対に契約はしないでください。もし、その場で契約を迫るような業者がいれば、そこは法律違反の可能性が高いです」と。

決め手は「親切心」ではなく「コンプライアンス(法令遵守)」

この、最後の言葉。
当時の私は、その言葉を「なんて誠実な人なんだろう」と、彼の親切心だと感じました。

しかし、後から知ったのです。それは、彼の優しさではなく、探偵業法で定められた、業者としての当然の「義務」だったということを。

そして、その「義務」を、まるで自分の信念であるかのように、当然のこととして、はっきりと口にしたこと。
それこそが、私が彼を「信頼できる」と判断した、最大の理由でした。

優しさや共感の言葉を並べるだけでなく、法律という客観的なルールを遵守する姿勢を明確に示したこと。それこそが、素人である私たち依頼者を守ってくれる、何よりの証拠なのだと、今なら分かります。

まとめ:電話相談は「相性」と「遵法精神」を見抜く場

初めての電話相談は、あなたの絶望的な状況を、本当に親身になって受け止めてくれる相手かどうかを見極める「相性診断」であると同時に、相手が法律を守るプロフェッショナルであるかを見抜く「デューデリジェンス(適正評価手続き)」の場でもあります。

どうか、感情だけに流されないでください。
優しい言葉の裏にある、法律を守るという固い意志を感じ取れるかどうか。

その冷静な視点を持つことが、あなたと、あなたの大切なご家族の未来を守ることに、必ず繋がっていくはずです。

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